自然は偉大なチャーチスト

自然と人間が為す相場との関係を考察するブログです。

第4次産業革命と日本

未来に向けて、いま日本が直面する課題は何か?

 

今回の新型コロナウイルスの感染拡大もあり、時間を効果的に使う働き方とことで、「テレワーク」や「在宅勤務」という柔軟な働き方が生産性向上に役立つという考え方が広く言われるようになってきました。

 

こうした新しい働き方が広がりを見せている背景には、今、日本企業が直面する大きな2つの潮流があります。それは、労働力人口の減少による人材不足と、第4次産業革命とも言われる産業構造の転換です。

 

 少子高齢化による中長期的な人口減少は不可避な状況です。日本の人口は2010年の1億2806万人でピークをうち、2050年には約9700万人になる(中位推計)と見込まれています。

 

  (国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」)

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出生数は、2016年に初めて100万人を割り込み。今後も減少する見通しとなっており、2050年には65万人まで減少すると予測しています。

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また、生産年齢人口は、2015年の7,700万人から2050年には約5,300万人になると推計されています。

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人口減少、生産年齢人口の減少は、日本経済は潜在成長率の低下を余儀なくされます。生産年齢人口の減少は資本蓄積の停滞を呼びます。投資が増えないということです。

 

その対策として、政府は「一億総活躍社会」を掲げ、女性やシニアなどの労働参加率向上と活躍推進に向けてさまざまな施策を行っていますが、労働力人口の減少に伴う人材不足のトレンドは今後も続くことが予想されます。

 

もう一つの大きなトレンドは、産業構造の変化です。2011年頃からドイツで提唱され始めたインダストリー4.0(第4次産業革命)の波は、世界的に広がりを見せています。

 

政府は、2017年に「未来投資戦略2017」及び「経済財政運営の基本方針2017」を閣議決定し、中長期的な成長を実現していくため、第4次産業革命の技術革新をあらゆる産業や社会生活に取り入れることにより、様々な社会課題を解決する「Society 5.0」を世界に先駆けて実現することとしています。

 

第4次産業革命の根源となるのが、「データ×AI」です。

社会の至るところに存在する多様なデータを最大限に活用し、AIにより分析し、有効活用する。多様なツールで様々なデータを収集し、そのデータを蓄積(ビッグデータ化)し、これらのデータについてAIを活用し処理・分析を行うことで、現状把握や、将来予測、ひいては様々な価値創出や課題解決を行うことが可能となります。それを様々な産業で、様々な用途で応用する、ICT(Information and Communication Technology )の役割が一層重要になります。

 

 第4次産業革命とは、蒸気機関の開発による「動力の獲得」(第1次産業革命)、電気エネルギーの利用による「動力の革新」(第2次産業革命)、コンピューターの出現による「自動化」(第3次産業革命)に続いて現在進行している産業構造の転換で、IoT、人工知能(AI)、ビッグデータの出現により、「自律化・相互協調」がもたらされると考えられています。

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すなわち、身の回りのあらゆるものがインターネットにつながり、それらが相互に情報をやり取りするとともに、そうした活動を通じて収集した膨大なデータを管理・分析することが可能になる。また、人間からの指示を受けなくても、分析結果をもとに人工知能が自律的に判断し、アウトプットが生み出されることで、ビジネスプロセスや社会構造が大きく転換していきます。

 

 そうした中、当然、働き方や仕事内容も大きく変化していきます。今回のコロナウイルス感染拡大により、在宅勤務やテレワークが広がりました。「非接触」のビジネスの可能性が追及されることになります。また、工場の組立ラインなどで定型業務のみを担ってきたロボットやコンピューターが、将来、非定形業務にも広がっていくことが予想されます。単純作業はAIやロボットにとってかわられ、業務はシステムにより管理され、ホワイトカラーの管理職はいなくなります。

 

 一方、データサイエンティストやシステムエンジニアに代表される、AIやロボットをビジネスでより効果的に活用していく職種のニーズは増加していくことが考えられます。人間は、発想力や空想力が試される仕事にある意味、特化することができるようになります。

 

 しかし、日本は、この「第4次産業革命」の波に乗り遅れています。

海外の各国は、「第4次産業革命」を、産業のみならず、労働や生活などあらゆる物事を根底から変える歴史的な変革をもたらすとみなし、かなり早くから取り組んでおります。

 

「第4次産業革命」という言葉が一般的に認識し始められたのは、ドイツで2010年に開催されたハノーバー・メッセ2011で初めて、「インダストリー4.0」として提言されました。

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「インダストリー4.0」では、製造業のIoT化を通じて、産業機械・設備や生産プロセス自体をネットワーク化し、注文から出荷までをリアルタイムで管理することでバリューチェーンを結ぶ「第4次産業革命」の社会実装を目指しています。ドイツ国内の機械業界主要3団体に加え、ボッシュシーメンスドイツテレコムフォルクスワーゲン等多くの企業が参加しています。ソフトウェア企業の買収やユースケースの創出、国を挙げた取組、産学連携、標準化等が進んでいます。


日本と同じようにドイツは非常に製造業が強く、輸出の8割を製造業で占めています。ドイツの独特の「マイスター制度」(職人制度)にAIを持ち込み、IoT(Internet of Things)を実現し、製造業の国際競争力の維持強化を目指しています。ドイツは、国内製造業に“世界のどこにも負けない”という自負があり、官民一体で、取り組んでいます。

 

米国は、インターネット技術を持っていたことから、第1次IT革命から先端を走ってきました。第4次産業革命については、2013年に始まった「Smart America Challenge」等を皮切りに、2014年3月に、AT&TCisco、GE、IBMIntelが米国国立標準技術研究所(NIST)の協力を得て、IoTの高度化を目指すコンソーシアムIndustrial Internet Consortium(IIC)を立ち上げるなど、加速しました。今や、米国はICTやハイテク企業が世界一多く、巨大IT企業であるGAFAM(GoogleAppleFacebookAmazonMicrosoft)を中心に世界のICTのインフラを提供しています。また、数々のAIなどのスタートアップ企業が誕生し、“破壊的イノベーション”の中心となっています。

 

中国政府は2015年5月に、国務院通達の形で「中国製造2025(Made in China 2025)」を公布しました。本戦略は、2049年の中国建国100周年までに「世界の製造大国」としての地位を築くことを目標に掲げた取組みであり、いわば「中国版インダストリー4.0」です。「中国製造2025」では、特に工業化と情報化の結合、IT技術と製造業の融合促進をはじめ、工業基礎能力の強化、品質とブランドの強化、環境に配慮したものづくりの推進、製造業の構造調整、サービス型製造業と生産性サービス業の発展、製造業の国際化水準の向上などが強調されており、とりわけ、「インターネット+」(インターネットと製造業の融合)アクションやビッグデータの利用、スマートグリッド建設と産業集積の成長推進やスマート製造案件実施企業の指定などが行われています

そして、今や、米国に次ぐ、ICTの生産拠点になっています。

 

日本は、2016年6月に閣議決定された「日本再興戦略2016」、「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針)、「ニッポン一億総活躍プラン」などにおいて、「第4次産業革命」が成長戦略の中核として着目されました。第4次産業革命に関連する分野を伸ばすことで、約30兆~40兆円の付加価値を作り出すとしています。

 

日本の長期停滞を打破し、中長期的な成長を実現していく鍵はSociety 5.0の実現にあり、そのために第4次産業革命(IoT、ビッグデータ人工知能(AI)、ロボット、シェアリングエコノミー等)のイノベーションを、あらゆる産業や社会生活に取り入れる必要があるとしています。


しかし、ITインフラに関しては、米国のGAFAMや中国の新興企業、韓国や台湾に追いつけずにいます。また、IT,AIの技術を担う若きテクノロジストも少ないといわれています。