自然は偉大なチャーチスト

自然と人間が為す相場との関係を考察するブログです。

ドイツの消費減税と日本の消費税

ドイツは、7月1日から、日本の消費税にあたる付加価値税を減税する。

 

日経新聞、6月4日)

「ドイツのメルケル政権は、6月3日、2020~21年に実施する総額1300億ユーロ(約16兆円)規模の新たな景気対策をまとめ、消費税に相当する付加価値税を期間限定で3ポイント引き下げ16%にすることが盛り込まれた。新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ消費や投資の回復を後押しする狙いで、ドイツ政府は追加の国債発行などで必要な資金を調達する見通し。

 

消費減税が柱で、付加価値税の税率は20年7~12月の期間限定で現在の19%から16%に下げる。食料品などに適用される軽減税率も7%から5%に下げる。

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また、子育て世代には子供1人あたり300ユーロの現金を支給する。電気自動車への投資や普及を支援する。売り上げが大きく落ち込んだドイツ鉄道の支援や電気料金の引き下げなども盛り込んだ。

 

ドイツ政府は3月に1560億ユーロの国債発行を伴う大規模な経済対策を発表したばかり。経済安定ファンドによる債務保証分なども含めると7500億ユーロ程度という大規模な対策で、企業の資金繰りを支援して経済の崩壊を食い止めてきた」

 

さすが、ドイツ。新型コロナ対策にしろ、原発問題にしろ対応が的確で早い。

 

  さて、新型コロナ対策として、日本では、消費税減税または消費税廃止すべきではないか?という論争があります。休業保障もなく、生活を維持することが難しくなっている国民が多くなってきている実態があるからです。そして、こうした時は、特に、生活弱者にしわ寄せがやってきます。

 

まず、「なぜ、これまで消費税は増税されてきたのでしょうか?

 

政府は、「消費税は社会保障の充実のために必要。消費税の引上げ分は、全額、社会保障費の充実と安定化に使われます」と公示しています。

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2014~17年度の消費税増税分(5%⇒8%)は、社会保障に使われているのでしょうか?


内閣官房の資料をみてみると、社会保障に使われているのは、全体の16,5%。後は、借金返済に使われているのが実態です。また、社会保障費自体、大幅に削減されています。

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そもそも、消費税導入当初の目的、直間比率の是正でした。

日本の税制が、それまで、直接税(所得税法人税)に偏っており、直接税の不公平が非常にあるということが指摘されていました。その解決方法が消費税という間接税の導入でした。

 

消費税が導入されたのは、1989年。3%からスタートして2016年までの間、消費税収は安定的に増加し。法人税は、減少しています。1989~2016年の間、消費税収累計は263兆円、法人税収累計は192,5兆円。消費税収の約73%が法人税収の減少分に充てられています。

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大企業には、過去最高益、バブルを超える増収増益を計上していますが、一方で庶民の実質賃金はいっこうに上がりません。

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日本の“忘れられた20年”、“20年以上のデフレ”は、こうした消費増税により、世の中にお金が回っていない、特に、GDPの約6割を占める個人消費にお金が回らないという仕組みになっているからだと思われます。

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消費税は、“消費に対するペナルティー”としか受け入れられていないのが現状です。

今は、コロナ禍でもあり、よりこの色彩濃くなっています。消費税は経済弱者にこそ重くのしかかります。

 

「日本の経済と人々の暮らしを立て直すため、最も効果的な施策が『消費税廃止』」。

 

 そして、消費税廃止あるいは減税だけではなく、富裕層や大企業への課税強化(増税)が必要です。しかし、ないところ(所得のない人や赤字の企業)からは取れませんので、「税金はあるところから取れ」がよいでしょう。

 

 具体的には、

①「大企業への優遇税制を一切廃止し、かつ、法人税にも所得税並みの累進税率を導入する」

所得税は「以前のような最高税率と累進性を復活させる。[金融所得への]分離課税も廃止し、全ての所得に同じ税(総合課税)を適用する」

 

とりあえずの措置として、所得税の累進性を強化し、高所得者最高税率を5%以上引き上げる(約1兆円の税収増)、金融所得に累進課税を適用する(約4兆円の税収増)、法人税率を10年前に戻し10%強引き上げる(約5.6兆円の税収増)だけで、10兆円分の税収を増やすことができます。さらに、大企業への優遇措置(開発研究投資の税額控除、配当益金不算入など)を縮小する、タクス・ヘイブンを利用した課税逃れを厳しく規制する、アマゾンなど巨大IT企業へのデジタル課税を行う当の措置をとれば、税収をもっと増やすことができます。

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そこで、いつも言われるのは、「政府の借金をさらに増やしても大丈夫か?」という点。

 

  もう1つの財源は、「政府の借金」を増やすこと。具体的には「新規国債の発行」です。

  

「『政府の借金増(赤字)=企業・家計の資産増』」。

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日本は無限に借金を増やせるのか?

 

「唯一の上限はインフレ」。

「インフレにならない限りは、政府債務を増やし、消費と投資を加速させても何ら問題がない。それどころか、『政府の借金=民間部門の資産』なので、完全雇用を実現するためにも、政府支出を増やした方がいいくらい。

 

 現在も、日本の政府債務残高がGDPの2倍にもなる1000兆円を超えているのに、財政破綻が起こっていないのはなぜ?

 

その理由は、ゼロ金利という超低金利が続いていることにあります。そのため国債の利払い額がほとんど増えず、したがって国債費(償還プラス利払い)も一般会計の4分の1内に収まっています。日本の経済はこれからも1%程度の低成長から抜け出せず、物価上昇率は鈍い。低成長、低金利、低インフレの常態化しています。

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また、財務省が発行した国債は、日本銀行が買い、お金をしじょうに供給しています。中央銀行が自国通貨で紙幣を発行し、国の国債を購入するのですから、国債のデフォルトはありません。

 

2002年、ムーディーズS&P、フィッチが日本国債の格付けを引き下げたとき、財務省は3大格付け会社に以下のように意見書を出しています。

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国債発行に上限はあるか?

 

2015年に日本銀行内閣府財務省が共同宣言したように、「インフレ率(物価上昇率)目標2%」にいたるまで、国債発行をしてもよい、こととなる。

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ただ、これは条件付きです。経済が成長しなくても、例えばエネルギーや食糧の輸入価格の急騰、為替レートが極端な円安になxtぅて、インフレが起こり、これを抑えるために金利を引き上げる必要が生じたときは、財政支出は抑制せざるを得ません。

 

ケネディ米大統領と経済学者トービンの会話が分かりやすい。

 

ケネディ:「債務対GDP比率に上限はありますか?政府債務はかどに 増やしてはいけないといわれますが、実際、支障はないですよね」

トービン(ノーベル経済学賞):「そうです」

ケネディ:「それでは、何が上限になるのですか?」

トービン:「財政赤字も政府債務も本来どんな規模でもよい。インフレにならない限りは!!それいがいはすべて、たわ言です」

 

  インフレになれば(例えば2%を突破する物価上昇が起こる)、財政支出の削減と増税という「緊縮」政策によってインフレを抑えこめばよい。しかし、いったん進行したインフレを抑えることが難しい。それまでに、積極財政を取っておくべきです。

 

日本の税制の大転換があった時、相場も底を打つ・・・かな。