自然は偉大なチャーチスト

自然と人間が為す相場との関係を考察するブログです。

資本主義はバカなのか?

 

1度、2度、失敗するのはしょうがない。反省して二度としないようにすればよい。

だけど、何度も、毎回失敗するのは、バカと言われる。

それがあの頭の良い人が考え、頭の良い人がその下で営む「資本主義」である。

 

「投資の勉強をしているのに、なぜバブルのことを学ぶ必要があるのか?それは第一に、私たちの暮らす資本主義の社会では、バブルは付き物だということです」

 

 日本では、1980年代後半の不動産や株価の上昇と好景気の時代を『バブル経済』と呼びます。2000年代初頭のNTT、光通信などの株価上昇は『ITバブル』、アメリカの2003年以降の住宅価格と金融資産価格の高騰は『住宅バブル』と呼ばれました。

 

 実は、バブルの歴史は古く、17世紀のオランダでは、『チューリップバブル』とよばれるバブルがありました。一般大衆までチューリップの球根を買いあさって、球根一個に家が一軒買えるほどの値段が付いたことがありました。

 

球根一個で家が買えた。

そう、それがバブル。その後も18世紀のフランスではミシシッピ会社という実態のないペーパーカンパニーの株に人々が殺到したミシシッピバブルが起こりました。目の前に、儲かりそうなチャンスが現れると、その実態に関わらず、人々は、みなそれに群がります。

 

 バブルは資本主義が社会に浸透し始めたころから各国で生じていました。そして、その度に混乱が起こったので、その愚かしさも、弊害も、誰もが知ることとなります。でも、誰もが分かっているのにバブルは繰り返され、21世紀の今日でも続いているのが現実です。むしろ、資本主義が成熟化するにつれてバブルの発生頻度が増えています。

 

 

 資本主義とは、市場の需給で価格が決まる社会で、誰もが自由におカネを使え、誰もが自由に儲けることができる社会です。逆に、おカネがないと暮らしていけないし、儲けないと豊かになれない社会です。人々が自由に儲けることができる社会になると、人はどう行動するか?全員とはいいませんが、ほとんどの人は、もっと儲けよう、損したくない、と行動します。

 

その人間の欲求とインフラの進化がバブルを助長します。金融市場が整備されて、投資、あるいは投機がしやすくなると、金融市場でどういうことが起きるのか?

2008年にリーマンショックがあり、市場は大混乱しました。しかし、その手前では債券価格も株価も、長く上昇を続けていました。そして、プロも素人も価格は高くなりすぎているのでは?と感じていましたが、それでも買う人の方が多かった。なぜでしょうか?

 

確かに、高過ぎると思うなら買わなければいいと思いますが、それはやはり結果論。

 

『音楽が鳴っている間は、踊り続けなければならない』という有名な話があります。これは2007年にサブプライム・ローンのリスクが高まっている最中に、シティグループCEO(チャック・プリンス)がフィナンシャル・タイムズ紙のインタビューに答えたものです。つまり、彼らは市場の価格が異常に高いことは、皆、知っていたのです。でも、価格が上昇基調にある間は、買わないと儲けられない。ですから、買わざるを得ないのです。

 

 米国の金融機関という組織で働いている人は、運用成績を問われます。特にディーラーと呼ばれる職種の人は、その成績が会社の業績はもちろん自分の給料にダイレクトに影響します。だから、ライバルが稼いでいるのに、自分が稼がないわけにはいきません。理屈はどうあれ、周りの人の儲け話を聞くと、自分も、と思ってしまいます。

 

日本のサラリーマン銀行ディーラーのA君は、市場が行き過ぎているというにんしきのもと、様子見を繰り返していたのですが、市場は一向に下がれず、A君が様子見を決め込んでから、1ヵ月も上昇が続きました。ある日、A君は上司に呼ばれ、「利益はどうするんだ。とにかく、買いでついていけ!!」と言われました。A君は翌日、買いを入れましたが、市場は翌日からバブルが弾け暴落しました。その結果、A君は大きな損失を被り、地方支店に飛ばされました。サラリーマンの悲哀です。

 

 

 日本でも、1985年からのバブル期には、一流といわれる企業まで財テクに走るなど、日本中がバブルに踊りました。トヨタや日産、松下でさえも1兆円を超える資金を運用し、1,000億単位の運用利益をあげていました。NTT株の売出しに日本中が熱狂し、NTTのピーク時の時価総額は当時の西ドイツと香港の市場を合わせた時価総額よりも大きい50兆円まで買われました。また、絵画を目が飛び出るような値段で買われました。1987年3月にはロンドンの競売所で日本企業がヴァン・ゴッホの『ひまわり』を3,990万ドル(約42億円)で落札したり、日本人のオーナー経営者がニューヨークの競売所でヴァン・ゴッホの『医師ガシェの肖像』とルノワールの『ムーラン・ド・ラ・ギャレット』を総額1.6 億ドル(約170億円)で落札したりしていました。

 

バートン・マルキールというアメリカの学者が『ウォール街のランダム・ウォーカー』という本の中で『より馬鹿理論』として紹介している話があります。もし株価が実体を伴わないほど高くなっていたとしても、それよりも高い値段で買ってくれる人がいる限り、その株を買うことに合理性があるという理屈です。どんな高値でも、それ以上の値段で売り抜けられるのなら儲かるからです。逆にいえば、理屈のつく妥当な値段、あるいは割安と考えられる値段で買っても、それより高い値段で買う人が現れなければ損失を抱えることになります。

 

ここ最近は10年おきにバブルが起きていますが、それには別の理由もあります。資本主義の国での景気刺激策は、金融政策と財政政策が二本柱です。金融政策とは、金利を下げることと通貨供給量を増やすことです。どこの国も、不景気では選挙で負けて政権が持ちませんから、金利を下げることで、低金利でお金を借りて工場や家を建ててもらって景気をよくしようとします。日本や欧州は、金融政策も行き過ぎており、マイナス金利です。

 

 ケインズは1930年代の世界恐慌に、金融政策と財政政策という二つの方策を取り混ぜて有効需要を増やして不況から脱却する解決策を示したわけですが、21世紀の今日は、ケインズの時代とは産業構造が大きく変わったことでバブルが生まれやすくなりました。

 

 ケインズの時代、第2次世界大戦後は、工業製品の大量生産が経済の柱で、それができる欧米が先進国とよばれた時代でした。しかし今は、情報通信、医療介護、観光娯楽、金融などのサービス生産が経済の中核を占めるようになっています。その結果、金融緩和によってあふれたカネは設備投資のような実物投資に向かうのではなく、金融資産や不動産への投資に向かいがちです。そうなると、資産価格のバブルを誘発しやすくなります。これが、近年、バブルが発生しやすくなった一つの背景です。

 

 しかし、バブルは必ず崩壊します。暴騰があれば暴落もあるのが相場の特徴です。オランダのチューリップバブルや1930年代のアメリカの大恐慌、そして直近のリーマンショックもすべてある日突然バブルがはじけて暴落が始まっています。

 

 企業の実力を離れて上昇した株価は、いつかは調整されて実力に近づきます。需給面でも、高騰した株が、何かのきっかけで、株を売ろうとする人が増えて下落を始めると、今度は上昇期に誰もが買おうとしたのと同じで、誰もが売ろうとします。人は、皆、自分だけは利益を確定しておこう、自分だけは損を抱えたくない、と動きます。

 

第一に、モノの値段はその価値とはかけ離れることがある

第二に、相場は実需だけでなく期待でも上下する

第三に、投機の対象となると暴騰と暴落が起こりやすい

第四に、資本主義ではバブルは付き物、特に、カネ余りの時期はバブルが起きやすい

第五に、バブルは必ず崩壊して相場は暴落するが、それがいつかは事前にはわからない

 

ということです。