自然は偉大なチャーチスト

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中国の5G戦略が世界をリードするが・・・

新型コロナウイルスの感染拡大による行動制限が完全には解けていないのに、中国は5G関連プロジェクトにエネルギーを注入している。北京の中央政府は「5Gネットワークの建設へ向けて邁進する」とうたい上げた。

 

中国の国有通信事業3社は、既に100億ドル相当に迫る5G契約を締結し、今年中に5G機器に255億ドルを投資する予定だ。さらに中国の全都市に5Gの通信サービスを提供するため、基地局を約50万基新設する。これまでのところ、契約額の90%近くは中国企業華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)と中興通訊(ZTE)に、10%がスウェーデンエリクソンに流れている。

 

欧州から見れば、中国への警戒心がさらに高まりそうな数字だ。欧州では新型コロナウイルスの感染拡大によって5G製品投入が遅れるなか、中国の国家主導による5G政策が優位に立つのではないかという懸念が強まっている。

 

今回のパンデミックにおける中国のプロパガンダへの怒りは、中国企業に対する欧州勢の警戒心につながってきた。1月にファーウェイの5Gネットワークへの関与にゴーサインを出したイギリスでさえ、ドミニク・ラーブ外相が「この危機の後、中国とこれまでと同じようにビジネスを行うことはできない」と語ったほどだ。

 

米政府も中国のパンデミック発生源の隠蔽疑惑を理由として、「共産主義体制によって支配される可能性のある全企業の徹底的な調査」を実施し、アメリカのネットワークへの接続を許可すべきかどうかを検討するとしている。アメリカのこの姿勢は、中国につながる国際的な通信インフラプロジェクトに影響を与える可能性がある。

 

この流れの中で、中国は5G競争を加速させている。既に中国政府は、2025年までに次世代情報インフラと「世界でもトップを行くモバイル通信ネットワーク」を構築する動きを進めている。ファーウェイはアメリカ発の技術に頼らずに、多くの5G基地局を売り出している。

 

この流れは、パンデミックによって増幅された。中国が5Gサービスを急速に拡大しているのは、産業の自動化を推進して企業がパンデミックによる行動制限に対処できるようにするためで、経済的影響を相殺する新しい消費の可能性を解き放つことが目的だ。

 

一方、輸出市場が落ち込み、中国の内需が期待できないなか、全国人民代表大会全人代)ではGDP成長率目標は発表されなかった。

 

今年の冬までに5G展開の第1段階を終え、現行の4Gネットワークから独立して機能するスタンドアローン・サービスを構築する第2段階へ突入すれば、国有企業が基地局の調達とインフラのシステム部分の構築を推進し、地方政府がそれを促進するという中国の統制経済的な側面が示されるだろう。このインフラの可能性を生かすのは、中国の民間企業の役割になる。

 

こうした積極的な動きは、今までの外国との競争と相まって、4Gでの中国の経済的成功を支えてきた。この傾向は5Gでさらに顕著になるだろう。5G技術を先導する中国企業は国外市場へと進出し、技術エコシステムにおける中国経済の影響力を一層強化。外国経済を「羽交い締め」にしかねない。

 

それに対し、米国は激しく抵抗するであろうし、欧州も否定しかねず、ITインフラの進化が停滞する可能性もある。