自然は偉大なチャーチスト

自然と人間が為す相場との関係を考察するブログです。

ソニー「VISION-S」

 ソニーは今年1月、アメリカで開催されたエレクトロニクスショー「CES」にEV(電気自動車)のコンセプトモデル「VISION-S(ビジョンエス)」を出展して、大いに話題をさらった。発表から半年が過ぎてVISION-Sが待望の国内凱旋を果たした。

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VISION-Sは4人乗りスポーツタイプのセダンだ。ソニーの社内デザイン部門であるSony Designによる設計図を元に、大手自動車メーカーの受諾生産を手がけるオーストリアのマグナ・シュタイアーが組み上げた。将来はソニーのエンブレムを付けたVISION-Sが世界の街中を走り回るのかと言えば、さにあらず。

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VISION-Sはあくまでも“コンセプトカー”なのだ。次世代の自動運転車やコネクテッドカーのためにソニーが得意とするテクノロジーを活かす方向性を模索し、パートナーに紹介・提案することと目的に試作され

 

ではソニーVISION-Sを通じてどんな先進技術をアピールしたいのか。ひとつはADAS(先進運転支援システム)等をサポートするセンシング用途の技術だ。現時点のVISION-Sの試作機には合計33個の運転支援のためのセンサーが搭載されている。

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例えば車両から光源を発して、その光が対象物に反射して車両に搭載するセンサーに届くまでの「光の飛行時間(時間差)=Time of Flight」を検出。対象物までの距離を測定する「ToFセンサー」は、人間の目では捉えきれない暗がりの中にいる人物や障害物を避けながら、安全な走行を実現するために有効なテクノロジーとして期待されている。

 

あるいは車両に積んだイメージセンサー(カメラ)によってキャプチャした高精細な画像と、ToFセンサーのように光検出による測距を行うLiDAR、ミリ波レーダーなど異なる種類のセンサーから取得したデータを融合して、自動運転の走行支援に活用する「センサー・フュージョン」はセンサーメーカーであるソニーだからこその強みを発揮できる領域として強くアピールしている。

 

センサーが取得したデータに対して高度な信号処理をかけてノイズ除去と最適化を行うことで、逆光や濃霧、雨の降る夜間など、運転が困難な環境下にもドライバーの安全運転をサポートする情報が導き出せる。

 

センサーが取得した情報を、ドライバーが運転しながら直感的に見て、操作ができるインターフェースに落とし込むノウハウもソニーが得意とするところだ。VISION-Sには車内フロント側のインパネ部分全面に広がる「パノラミックスクリーン」が配置されている。

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ソニーが培ってきた映像技術、モバイル端末の開発から得たユーザーインターフェースの知見を活かした巨大なディスプレイには走行情報やエンターテインメントを自在に映し出せる。

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シームレスにつながっているように見えるスクリーンは複数のタッチパネルディスプレイにより構成されている。例えば助手席に座る同乗者が目的地までのルートを検索して、地図を表示したスクリーンをドライバー席に近い側のスクリーンにスイッチして見せるといった使い方ができる。

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VISION-Sにはバックミラーやサイドミラーを搭載する代わりに、車体の内外に設置したカメラで撮影した画像をパノラミックスクリーンに表示する技術が搭載されている。もし夜間に運転する場合、暗所でも明るく色鮮やかな映像をキャプチャできるソニーイメージセンサーと高精細なスクリーンによる表示がドライバーの安全走行を力強くサポートしてくれそうだ。

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新世代の自動運転モビリティでは、ドライバーがハンドルを握って運転することから解放され、車内空間の中でリッチなエンターテインメントを楽しむ時間が増えると言われている。

 

ソニーの技術が作り出す「快適な車内エンターテインメント」を実現する技術を見せるためのコンセプトカーでもあるVISION-Sには、ソニー独自の立体音響技術である「360(サンロクマル) Reality Audio」のサウンドも体験できた。

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VISION-Sの車内は座席が固定されているため、それぞれの座る位置が迫力あふれるサウンドが楽しめるスイートスポットになる。360 Reality Audioが自動車空間と相性の良い技術であることを改めて実感し自動車としてのデザインにも高級感があるし、車内空間も贅沢な気分で過ごせるようにしっかりと作り込まれている。台数を限定して、ぜひ“ソニーの自動車”として販売してみてもいいのではないか?

 

試乗体験で「ソニーのセンサーの実力」も目の当たりにできるものと期待していたが、残念ながら今回そのデモンストレーションはなかった。ソニーでは、VISION-Sを公道で走らせて行う試験走行は欧米日の各地域で順次始める計画を立てており、国内では年度内の実現に向けた準備が進められているそうだ。

 

VISION-Sには5Gネットワークへの“常時接続”を実現するための通信システムも搭載される予定だ。将来はコネクテッドカーを5Gネットワークに常時接続して、車の成長と進化をタイムリーに、かつ柔軟にサポートできるプラットフォームを提供したいと考えている。音楽・映画などストリーミングコンテンツを車内で楽しむためのエンターテインメントシステムも含めて、ソニーの得意とする技術を結集して『オートモーティブとITテクノロジーの融合』を力強くリードしていくだろう。