自然は偉大なチャーチスト

自然と人間が為す相場との関係を考察するブログです。

アップルの「WWDC2020」

6月23日、毎年恒例のアップルのWWDC(Worldwide Developers Conference)が開催された。例年なら、米カリフォルニア州サンノゼに開発者やプレス関係者を集めて開催されるが、今年は新型コロナウィルス感染症の影響で、完全オンラインでのイベントとなった。毎年、デベロッパーの間では、WWDCのチケット争奪戦が大変なことになっていたのだが、今年はオンラインイベントとなり、参加者に制限はなく、誰もが無料で視聴することができる。

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また、基調講演の動画が非常に作り込まれたものとなり、見易かったと高評価続出。

アップルの技術をふんだんに使い、隅々に工夫が凝らされていた。オンラインでの開催が定着するかもしれない。

 

基調講演のビデオには、世界各国の言語による字幕がついた。これはアップルの新たな翻訳技術である

 

 (ポイント1)Apple Silicon

 

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 アップルはこれまで、半導体など部品メーカーの巨大なエコシステムに生産を委ねることで、モバイル端末の帝国を築き上げてきた。だが、ティム・クックCEOは今、その多くを自社へと回帰させようとしている。

 

アップルは、パソコン「Mac(マック)」について、年内から内製化チップ(ARM)を搭載したものに切り替えていくと発表した。これにより、15年にわたる半導体大手インテルとの提携は打ち切る。自社設計のチップの方が効率性が高く、画像の性能も上がると説明した。

 

なぜCPUアーキテクチャの変更に踏み切ったのか? 基本的な理由は2つ。「自社開発で“消費電力を抑えつつ性能を上げること”」と、「ハードウエアからソフトまで、一気通貫に開発できる環境を整える」ことだ。

 

現在のインテル製CPUは決して遅くない。モバイル系プロセッサーに比べれば速いシーンが多いし、デスクトップ向けに十分な電力が使えて熱設計に余裕があるものなら、さらに有利だ。

 

しかし、ノートPCやタブレットのように、消費電力と発熱の低減が必須な環境では、処理性能はすでにARM系プロセッサーであるアップル開発の「Apple Aシリーズ」の方が速い。また、比較的規模の小さなCPUコアを増やしていくことで、処理能力のスケーラビリティを実現しやすい、ということもある。

 

Apple Silicon」は正式名称というより、アップル自社開発半導体の愛称のようなものだ。2020年末に登場する「Apple Silicon版Mac」で使われるのがどのようなものかはまだわからないが、「消費電力の低さと性能の高さを両立する」ことは宣言されている。

 

アップルは現在、スマートフォンiPhone」の中核部品の約42%を自社で手掛けている。この割合は、約5年前の8%から大きく上昇しており、今後も将来的にモデムチップやセンサーが内製化されるのに伴い、さらに高まる見通しだ。

 

 自社で独自部品を手掛ければ、コストを削減できるほか、将来の新製品に対するアップルのコントロールも強まる。アナリストによると、内製チップ搭載の新型Macは1台当たりコストを推定75~150ドル(約8000~1万6000円)押し下げる見通しで、アップルは顧客や株主に浮いた分を還元できるだろう。

 

 こうした戦略は、共同創業者、故スティーブ・ジョブズ氏が掲げていた「中核部品を自社で持てば競争力が高まる」とのアップルの哲学に根ざしている。アップルは内製化チップやセンサーにより、iPhoneタブレット端末「iPadアイパッド)」、Macのバッテリー性能や機能で、ライバル勢を大きくリードすることができるだろう。また、汎用部品を利用する中国勢との競争からも逃れられる可能性がある。

 

 アップルが10年をかけて進めてきた自前のシリコンチップ設計は、半導体業界を揺るがしている。インテルはラップトップPC向けチップで約20億ドルの売上高(全体の2~4%)を失う見通しだ。アップルがチップ設計を拡大するのに伴い、他の半導体メーカーの株価も近年、急落しており、一部のサプライヤーは身売りか、事業撤退に追い込まれている。

 

 「インソーシング」とも呼ばれる取り組みにより、アップルはデバイスの性能面で、競合勢よりも2年先を行くことが可能になると指摘されている。複数のチップが同時に機能できるようにすることで、電力消費を抑え、iPhoneiPadの空き容量を一段と確保できるになるためだという。また、製品計画に関する情報流出リスクも低減できる。

 アップルの半導体部門は過去10年にエンジニア数千人の規模まで急拡大。チップ内製化を進めるのに伴い、オフィスを設置し、クアルコムインテルのエンジニアらを引き抜いている。アップルは過去10年に、6社以上の半導体メーカーを買収。これには、昨年10億ドルで取得したインテルのモデム事業も含まれる。

 

 アップルが自分で半導体を設計して発注し、さらにはOSを中心としたソフトを作っているということは、「製品計画のほとんどの部分を自社が握ってコントロールする」ということでもある。他社が開発・製造するプロセッサーのロードマップや生産量に引きずられる必要はなくなる。

 

(ポイント2)Big Sur macOS11

 

次のmacOSの名前は「Big Sur」になった。カリフォルニア州沿岸部の地名で、サンフランシスコとロサンゼルスの中間くらいの位置にある。2000年のパブリック・ベータ登場以来、MacのOSのバージョンは「X=テン」だったのだが、ついにここにきて「11」になった。Apple Siliconへの移行に加え、デザイン面で大幅な変更も行なわれている。

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UIのボタンや設定などはiOS・iPadOSに近い部分があり、それらのOSが刷新されたこともあって「両者を寄せてきた」印象もある。

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macOS Big Surは、広がりのある新デザインを採用し、アイコンなどもiPad/iPhoneに近づけている。ボタンやコントロールは必要な時に表示され、必要のない時には非表示になる。メニューバーには新しいコントロールセンターが搭載され、デスクトップから各コントロールにすばやくアクセスできる。

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 通知センターは、よりインタラクティブに通知が表示され、デザイン刷新されたウィジェットによって、重要な情報を一目でわかるように提供する。

 

(ポイント3)IOS14

 

iOSでは、「iOS 14」にアップデート。

昨年は、iOSよりもiPadOSの進化が目立った年が、今年は「iOS14」だ。ユーザーに向けた機能追加の数だけで言えば、20年ぶりにバージョン番号を上げたmacOSよりも上だ。

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もっとも大きな変化は「ウィジェット」の強化。アプリの一部機能・情報表示部を切り出して使うのがウィジェットであり、iOS・iPadOSには以前から備わっていた。しかし「13」世代までは、単に並べていくしかなく、自由度が低かった。アプリが並ぶ「ホーム画面」は、あくまでアプリのアイコンが並ぶ場所と限定されていたからだ。これは、ウィジェットを活用してきたAndroidとの非常に大きな違いと言える。

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iOS 14では、ウィジェットのサイズや配置の自由度が劇的に上がった。Android的なアプローチをアップルが採用した、と言ってもいい。もちろん、並べ方や表情はAndroidとは違う個性がある。とは言え、「ホーム画面の一枚目はアプリを並べておく場所」という常識が変わるわけで、これはiOSはじまって以来の大改革と言える。iPadOSやmacOS Big Surにも、iOS 14の変更を承ける形でウィジェットの強化が行なわれており、当面は「アプリがどうウィジェットを活かすのか」、「どうウィジェットを並べると効率的で美しいのか」といった議論と試行錯誤が続きそう。

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また、iOS 14の機能として、ウィジェット同様に大きく惹かれたのが「App Clips」である。

 

これは「インストール不要なちっちゃいアプリ」のこと。サイズが10MBまでと小さく機能の一部だけを持つアプリを使うときだけ呼び出し、短時間でロードして使う。

 

App Clipsを使えば、アプリストアまで行く手間を省き、アプリ利用とサービス利用の拡大を促進できる。この考え方は新しいものではなく、中国などでも「ミニアプリ」として広がっている。それをアップル流のUIで「OSの標準機能」とし、アプリ経済圏拡大に使おうとしているわけだ。

 

そして、「Picture in Picture」。別ウインドウの小窓で動画が見れたりする。

「Car Play」は、iPhoneを車のキーの代わりに使える機能。

 

(ポイント4) iPadOS 14

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昨年、格段に進化したiPadOS。今回は、iOS 14の進化に伴い、ホーム画面のウィジェット。Siriや着信の小窓オーバーレイ表示、メッセージの新機能、•「写真」や「ミュージック」での「サイドバー」の追加。そして、Apple Pencilで手書きをテキストに変換(Scribble採用)してくれる。検索機能も改善している。