自然は偉大なチャーチスト

自然と人間が為す相場との関係を考察するブログです。

ソニーのイメージセンサー

ソニーが稼ぎ頭の一つである半導体事業で多角化を進めている。イメージセンサースマートフォン向けに偏っていたが、人工知能(AI)を搭載したセンサーを開発し産業や小売業へと販路を広げ、将来的にはサブスクリプションサービスの提供も見据える。必要な人材は社内横断的に集まってきており、ハードからエンタメコンテンツまでを擁する複合企業に対する金融市場からのネガティブなイメージを打ち返せるかも試されそうだ。

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イメージセンサー事業を長期的にどうすればより競争力を維持できるか?」
解決策の一つが、センサーというハードの「モノ売り」にソリューションという「コト売り」をアドオン(追加)することだった。

ソニーは昨年6月、半導体でのコト売りに向けシステムソリューション事業部を立ち上げ、今年4月にはAIを搭載したイメージセンサー「IMX500」のサンプル出荷を始めた。

AIセンサーでは、情報ネットワークの末端(エッジ)に位置するセンサーが捉えた画像を解析し、必要な情報を抽出した上でクラウドサーバーに転送する。データ量が格段に小さくなり、画像データをそのままクラウドサーバーに転送して解析するのに比べ通信に伴う遅延やサーバーの負荷が軽減される。

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画像データをより価値のある情報に加工するニーズには、ハードの市場より拡大余地がある。ソニーは関連技術を獲得するために買収も積極的に行っており、昨年買収したスイスのミドクラは、AIセンサーの開発に大きく貢献しているという。

ソニーイメージセンサーは、シェアでは2位の韓国サムスン電子に倍近く差をつけるなど他を圧倒しており、同社にとって稼ぎ頭の一つでもある。ただ、スマホ向けが約9割を占め、用途の偏りが大きい。米中摩擦で主要顧客の中国の携帯端末大手のファーウェイの経営が揺さぶられるなど、市場の先行き不透明感も増している。AIセンサーは製造業や小売業向けを想定し、利用が広がれば用途の多様化に寄与し得る。

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その先には、半導体ソリューションのサブスクも見据える。サブスクでは、顧客と継続的につながることができ、安定収入も期待される。すでにゲーム事業ではサブスクを提供し着実に利用者が増加、音楽事業では米アップルやスポティファイのサブスクを通じて配信される楽曲の著作権収入を得ている。

もっとも現時点では、ソニー半導体でのサブスクが事業の柱に育つかは読みにくい。ソニーの取り組みは業界の流れに沿うとみる一方、「製造業や小売業の現場にどれほどのニーズがあるかは、やってみないとわからない。金融市場の関心は当面、引き続きスマホ向けセンサーの動向に向かいやすいという。

ソニーは来年、社名を「ソニーグループ」に変更し本社機能を明確化する。金融子会社のソニーフィナンシャルホールディングスを完全子会社化する方針も打ち出した。

足元のように不確実性が高まっている状況下では、一時的に儲かるビジネスが次の局面でどうなるか読みにくく、一つの技術が多用途に応用できる方がいいとの考えである。

ソニー半導体事業では、製品に組み込むソフトの技術者が多くクラウドやネットワークに精通する人材が少なかったが、グループ全体を見渡すと様々なソフトウェアエンジニアがいる。志願して我々の事業部にくるエンジニアも、かなり増えてきており、新たな取り組みは、複合企業で課題とされる横断的なリソース活用の成否を試す機会にもなるかもしれない。

新型コロナウイルス禍が産業界に広がるなか、半導体生産が持ちこたえている。2020年7~9月期の世界の半導体工場の平均稼働率は88.8%の見通しと他業種に比べ明るい。これはビデオ会議などクラウドサービスの需要拡大でデータセンター投資が活発なことが背景にある。

 これまで半導体業界は経済危機のたびに大規模な減産を迫られてきた。稼働率はITバブル崩壊後の01年に70%を下回り、リーマン危機後の2009年1~3月期は50%を割り込んだ。しかし、今回は違う。コロナ禍で新たな需要が生まれていることが追い風だ。在宅勤務などに伴うテレビ会議サービスなどを支える米アマゾン・ドット・コムや米マイクロソフトなどクラウド大手のデータセンター投資が半導体需要を支えている。

 世界の半導体産業の市場規模は40兆円を超え、材料や装置など幅広い業界に需要を呼び込む。コロナ禍で多くの産業が需要蒸発にあえぐなかでの高水準の半導体生産は、関連業界の生産活動を下支えする効果が見込める。