自然は偉大なチャーチスト

自然と人間が為す相場との関係を考察するブログです。

コロナ後の景気回復、ナイキのロゴマーク型になる理由

 

 多くの政策当局者や企業幹部はつい最近まで、新型コロナウイルスパンデミック(世界的大流行)後のV字型の景気回復を期待していた。短期的な急降下から、パンデミック前の状態に素早く戻るとみていたのだ。

 

 だがこのところは、「スウッシュ」型の回復を予想するようになった。

 

 ナイキのロゴマークにちなんだこの名称が示すのは、大幅な落ち込みに続く、痛ましいほど遅々とした回復だ。欧米など西側諸国の国内総生産GDP)が2019年の水準に戻るのは来年の終わりか、それ以降になるとみられている。

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酔いも覚めそうな見方だが、統計に表れた景気収縮の深刻さを反映している。失業者の急増に加え、とりわけ西側世界における何カ月あるいは何年にもわたるソーシャルディスタンシング(社会的距離の確保)が、来年のかなり先まで経済活動を下押ししそうな気配が明らかになっていることも背景にある。

 

 スイスの食品大手ネスレのマーク・シュナイダー最高経営責任者(CEO)は、「迅速な回復にはならないだろう」とし、「数年といったプロセスにならなくとも、数四半期はかかる」との見方を示した。

 

 航空会社は旅客数がコロナ前の水準に戻るのは早くとも2022年になるとみている。ワクチンができるまでは、ソーシャルディスタンシング措置により、以前ほど簡単に映画を見に行ったり、外食したり、美容室に行ったりすることはできなくなりそうだ。

 

 消費財メーカーは、買い物客が割安な商品に切り替えてぜいたくを控え、ロックダウン(都市封鎖)が解除されても相当長いこと生活を切り詰めるとみている。一部の企業は早くも追加のレイオフを発表しており、既に3000万人を超えている米失業者数はしばらく高止まりするだろう。

 

見通しが一段と暗くなっている理由は、ロックダウン措置は、一旦解除されても、再度ロックダウンする必要があるであろうことやコンサートやプロスポーツなど、大型イベントは何カ月も後まで実施できないそうにないこと。また、営業を再開した小売店やレストランはソーシャルディスタンシング措置に従い、入店人数を制限しなければならず、感染リスクを懸念する消費者は、以前の習慣に戻るのには長い時間を要するであろうことなどがあげられる。

 

 市場調査グループのコアサイト・リサーチの調べでは、米国人の7割余りがロックダウンの緩和後も一定の公共スペースを避けようとしている。ショッピングモールには近づかない予定という人も過半数に上った。そのうち3分の1近くは、6カ月以上にわたって避けるつもりだという。コアサイトによる別の調査では、回答者の半数余りがクリスマスの買い物を減らす計画だと答えた。

 

 秋から冬にかけてウイルス感染が再び増加しかねないと懸念されていることから、一部アナリストは回復が頓挫する可能性を警告している。「スウッシュ」型回復は滑らかではなく、凸凹だらけの線になるかもしれない。

 

 航空会社は既に、ビジネスの早期平常化ではなく、回復に何年もかかることに備え、事業再編へ向けた恒久的な措置を講じ始めている。

 

ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングス は11日、10月からホワイトカラー従業員をおよそ3割削減する計画を明らかにした。米連邦政府の支援金約50億ドル(約5400億円)を受給する条件に従い、9月末まではレイオフを行わないことで合意していた。 欧州ではブリティッシュ・エアウェイズが最大1万2000人の削減を予定している。同社は旅客数が数年は19年の水準に戻らないとみている。

 

 こうした人員削減は事業投資にも影響している。

 

 米航空機大手ボーイングと欧州の同業エアバス・グループは減産体制に入った。両社向けエンジンを製造する米 ゼネラル・エレクトリック (GE)は、航空エンジン事業の人員を25%削減する。自動車部品売上高で世界最大手の独ロバート・ボッシュは、今年の世界自動車生産が最大20%減少するとの見通しを示した。

 

 「今回の危機は、一時的なバトル(争い)ではない。長期なWar(戦争)だ」